C#で開発をしていて、データベースのパスワードやアクセストークンといった、
機密性の高い情報をコンフィグに記載してバージョン管理するのはセキュリティ上、如何なものかと思い調査した。
C#、ASP.NET Coreで解決策の1つとして、User Secrets という組み込みの仕組みがあり、ローカル開発での機密情報管理に推奨されているよう。
備忘録も兼ねてまとめてみます。
User Secrets の基本的な仕組みと目的 (おさらい)
仕組み
- 機密情報(例: DB接続文字列、APIキーなど)を、プロジェクトディレクトリ外のユーザープロファイルフォルダ内にある secrets.json ファイルに保存します。
- 各プロジェクトは一意の UserSecretsId を持ち、これによって対応する secrets.json ファイルが紐付けられます。
- ASP.NET Core の構成システム (IConfiguration) が、開発環境での実行時にこの secrets.json ファイルを自動的に読み込みます。
主な目的
- ソース管理からの機密情報の分離: これが最大の目的です。Gitなどのリポジトリに機密情報がコミットされるのを防ぎます。
- ローカル開発環境の簡素化: 開発者が自分のマシンで簡単に機密情報を設定できるようにします。
User Secrets の具体的な利点
セキュリティの向上 (最重要)
- 機密情報がソースコードリポジトリにコミットされるリスクを劇的に低減します。これは、偶発的な情報漏洩を防ぐ上で非常に効果的です。
開発効率の向上
- 開発者は自分のローカル環境に合わせた設定(DB接続先、テスト用APIキーなど)を、他の開発者やリポジトリを汚染することなく簡単に管理できます。
- 新しい開発者がプロジェクトに参加した際も、必要なキーのリストと設定方法を伝えれば、すぐに開発環境を整えられます。
クリーンなコード
- コード内に接続文字列やAPIキーをハードコーディングする必要がなくなります。IConfiguration を通じて抽象的にアクセスするため、コードの可読性や保守性が向上します。
環境ごとの設定分離の促進
- appsettings.json、appsettings.{Environment}.json、User Secrets、環境変数といった構成ソースの優先順位を理解することで、どの情報をどこに置くべきかという設計思想が自然と身につきます。
開発者ごとの環境差異の吸収
- 各開発者が異なるローカルDBインスタンス名やポート番号、異なるテストアカウントのAPIキーなどを使用していても、User Secrets を使えばそれぞれが自分の設定を安全に管理できます。
User Secrets の限界と補完的なアプローチ
本番環境では利用不可
User Secrets はあくまでローカル開発用です。
本番環境では環境変数、Azure Key Vault、AWS Secrets Manager、Google Cloud Secret Manager、HashiCorp Vault などのより堅牢な方法で機密情報を管理する必要があります。
CI/CDパイプラインでの利用不可
CI/CD環境では、その環境が提供するシークレット管理機能や、連携するシークレット管理サービスから情報を取得します。
シークレットの配布
チームメンバーに「このキーを設定してね」と伝える手段は別途必要です(口頭、チャット、ドキュメントなど)。secrets.json ファイル自体を直接共有するのは避けるべきです。
推奨されるプラクティス
UserSecretsId の管理
.csproj ファイル内の “UserSecretsId” はリポジトリにコミットされるため、チームメンバー全員が同じIDを共有します。
これにより、どの secrets.json がプロジェクトに対応するかが明確になります。
必要なキーのみを格納
User Secrets には本当に機密性の高い、ローカル開発固有の情報のみを格納するように心がけよう。
非機密な設定は appsettings.Development.json などに記述します。
定期的な見直し: 使用しなくなったキーが secrets.json に残っていないか、たまに見直すと良いでしょう。
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